ニュースリリース

<月刊 食品工場長 2009/10/01 日付 32面掲載>

工場ルポ:成田食品・栃木工場
徹底した原料管理と温度管理で新鮮モヤシをD0(デイゼロ)出荷

首都圏の大手量販店や生協の要望でD0体制を整えるために造られた成田食品の栃木工場。「成田もやし」はどのように育成されるのか、取材した。

真岡ICからわずか10分
5万平方メートルの敷地

栃木県真岡市は県の南東部にあり、東京からは約100km。成田食品の栃木工場は大和田産業団地に属し、この団地は芳賀郡二宮町にあったが、09年3月に隣接する真岡市に編入した。
栃木工場の稼働は、04年5月。3万平方メートルを購入して、この工業団地に一番乗りした。当時は道路も整備が十分ではなかったらしい。
今年3月、ここから10分の場所に北関東自動車道の真岡ICができ、ますます便利になった。同社ではさらに隣接する2万平方メートルを購入し、1年分のモ ヤシの種「緑豆」を保管できる倉庫も建設中だ。11月末には完成し、来年1月以降に輸入され始める新豆はここで保管する予定。
さて、このように車のアクセスはいいのだが、電車だと真岡市はちょっとアクセスが不便である。最寄り駅は真岡鐵道の寺内駅であるが、電車の本数が少ないので、JR宇都宮線の小金井駅からタクシーに乗って向かった。20分強で到着だ。

モヤシ出荷量は3工場で年間7万t以上

さて、成田食品は1952年創業で、福島県相馬市に本社を置くモヤシ製造のリーディングカンパニーである。創業者が農業の傍ら個人で創業したのが始まりだ。その後69年に成田もやし製造所として法人化し、81年に社名変更して現在に至る。
同社は、本社工場(福島)と、岐阜工場と合わせて3つの工場を持ち、合わせたモヤシの出荷量は年間7万t。これは、全市場の15%になる。
栃木工場はISO9001を07年に認証取得。深夜0時から8時までと8時から夕方までの二直で工場を稼働させている。

来客用の更衣室もあり

稼働以来工場長という鈴木与市氏の案内で、工場を見学する。モヤシの工程は(1)原料受け入れ→(2)原料選別→(3)仕込み→(4)育成→(5) 収穫→(6)洗浄→(7)冷水シャワー→(根取り機/一部商品)→(8)脱水機→(9)色彩選別→(10)計量→(11)包装→(12)目視・箱詰め →(13)出荷の順。
前室につながる更衣室は、来客用の部屋も用意されていた。取引先の品質管理担当者やバイヤーの見学は多いとのこと。
前室でローラー掛け、鏡で毛髪のはみ出しなどチェック、手洗い、手指消毒を経て、オールステンのエアシャワーへ。このエアシャワーは特注品なのだそうだ。

トレース可能な緑豆

工場の建屋は100m×95mのほぼ正方形。2階が原料倉庫と仕込み室、1階が育成室から出荷までの工程になっている。ほかにカット野菜の工場もある。原料冷蔵庫、トリミング室、カット洗浄室、包装、出荷ヤードまで工程ごとに管理されている。
原料倉庫には、中国産緑豆が麻袋に入って1パレットに25袋ずつ載せられている。中国の集荷場で手選別した段階で、緑豆にコードを付け、トレースができる 仕組みになっている。同社では3工場でこの緑豆を約7000t/年使用しているが、この工場では約1500t/年を使用する。
倉庫に入る。工場ではパレットごとに帳票が付いていて、トレース管理している。いつ工場に入荷したか、いつ横浜に着いたか、大連の契約倉庫でいつからいつ まで保管されていたかひも付けされている。1200枚のパレット自体にも全部ナンバリングがされていて、どこに何枚パレットがあるのか、分かるようになっ ている。
この倉庫では500t、すなわち4カ月分しか緑豆を保管できない。一方で緑豆が中国で収穫されるのは年に1回の9月で、1月から順次新豆が日本に送り込ま れてくる。5月以降は気温が上がり、冷蔵倉庫が少ない中国での保管が難しくなるので、当然国内の貸倉庫を借りることになる。ちなみに倉庫の温度は15度 C。
そこで、自社で管理しようと隣接地2万平方メートルを新たに購入し、1800tを保管できる原料倉庫と機械などの資材置き場を建設中だ。11月末には完成する予定

育成室で真っ白に輝くモヤシ

原料倉庫から出た豆は、選別機にかけて仕込み室へ。ここで、仕込み室では温湯殺菌を行う。豆を一定時間お湯に漬けて殺菌する。同社では創業以来モヤ シの塩素殺菌は行っていないとのこと。豆の状態によっても発芽率が違うので、サンプリングの段階で発芽率を高める温度などをロットごとに決定するとのこと だ。
1階へ移動する。育成室は全部で16部屋。分厚い扉に囲まれて廊下とは2重に遮断された育成室は、幅10m×奥行き10m×高さ1mほどのステンレスでできており、ここに緑豆が投入される。
そして温度や散水の量の管理をし、水を与え、10日後に収穫だ。
モヤシ工場はとにかく水を使う。この工場の水使用量はピーク時で1日4000tとのこと。
明日出荷するという育成室をのぞいた。一面モヤシで白く輝いている。発芽したばかりの生命力にあふれて美しい。モヤシをつかむとその下にもモヤシがある。約1mのモヤシがふんわりと育成室の中に詰まっている。5tの豆が50tのモヤシに大変身だ

洗浄を繰り返し最終製品にり

洗浄工程に入ったモヤシは、まず水槽でエアレーションしてほぐされ、モヤシにくっついていた豆がらの大部分をここで落とす。そのあと自動洗浄機にかかる。そのあと品温を下げて鮮度を保つために冷水シャワーを掛けて、アイテムによっては根取り機にかけて根をカットする。
その後、脱水機で水気を取り、色彩選別機で確認検査、計量機で計量して、包装機で包装した後、金属探知機を通す。その後、箱詰めをして、すぐに冷蔵庫へ。その日のうちに出荷となる。
冷蔵庫は5度C、出荷ヤードも10度C、輸送用の専用トラックの庫内温度も5度Cと温度を徹底的に管理している。

天候不順などで、野菜が高騰するとモヤシは需要が増えるとのこと。自然に左右されずに栽培できるモヤシがこのように衛生的な工場で栽培されていることを知り、感動した。スーパーに並ぶモヤシのブランドも今後はチェックしていきたいと思った。

○工場概要
■所在地:
  栃木県真岡市大和田1-12
■稼働年月日:
  2004年5月23日
■製造品目:
  緑豆もやし、カット野菜
■従業員:
  84人
■工場長:
  鈴木与市氏

モヤシ

▲拡大画像 ≫

▲拡大画像 ≫

▲拡大画像 ≫

▲拡大画像 ≫

リサイクル:豆がらは飼料に

排水に混じって排出される豆がらは、排水と分離させ、圧縮機で搾って、袋に詰める。このままサイレージ(発酵飼料)となる。半年は持つとのこと。産廃でなく有価で引き取られる。

サイレージをつくるプラント

ページトップへ

  • レシピ動画集
  • とっておきレシピ